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【技能実習】Q61:失踪を防止するにはどのような方法がありますか?

実習実施者

回答

出入国在留管理庁が令和元年12月24日に「失踪技能実習生を減少させるための施策」としてまとめた資料では、失踪の主な原因として

 ○ 賃金等の不払いなど,実習実施者側の不適正な取扱い

 ○ 入国時に支払った費用の回収等,実習生側の経済的な事情

があげられています。

実習実施者は技能実習生が不適正と感じるような取扱いを行わないことに気を配り、監理団体は技能実習生が不適正な借金を抱えないように送出機関とともに取り組むことが重要という回答が一般的かなと思います。

おそらく知りたいことはそういうことではなくて、もう少し具体的な取り組み方法だと思いますので違う観点から説明します。

失踪を決意したのは?

入管庁が指摘する原因といわれるような不満があったとしても、普通は知らない国で犯罪となるような行為をしようとは思いません。

失踪を軽いことと誤認するような勧誘や決意させる何らかの働きかけ外部からあって失踪に至ったのだと考えます。

失踪防止のためにはそのような外部からの影響力を排除するための取組によって防ぐことができるのではないでしょうか。

外部からの影響力を排除するには

○外部からの影響力を防ぐ
○内部からの影響力で対抗

という2つの取組方法があります。

なぜ、人は動かされるのかをまとめた「影響力の武器」(著者:ロバート・B・チャルディーニ)という本があります。この本に書かれている影響力の仕組みを利用して2つの方向から取組方法を考えてみます。

外部からの影響力を防ぐ

希少性の影響力

「限られたものほど、欲しくなる」というものです。

初回限定特典と言われると普通より欲しくなってしまうアレです。

「一緒についてきたら今より稼げるぞ」という言葉に「あと枠が一人だ」「お前だから誘うんだ」などと言われると特別感を感じて急いで決断しないと損するような気持ちになり失踪を決断してしまいます。

このような影響力に対抗するには、甘い誘惑があった場合には衝動のままに行動せず、一旦冷静になってじっくり考えることを身につけることだと思います。

日本という外国で失踪することは在留資格を失うことになので、その後に真っ当な仕事に就くことができなくなることや、そうなった時に正当な報酬が期待できないこと、特別感を醸し出しての誘い文句は決断を迫るためのものであることなどを繰り返し教育し、それを身につけさせることで対抗できるのではないかと思います。

社会的証明の影響力

「周囲の動きに同調したくなる気持ち」というものです。街頭で多くの人が一つの方向を見ていると、その場にいる人のほとんどが同じ方向を見てしまうアレです。

多くの技能実習生が失踪していると「みんながやっているからには何か理由や価値があるに違いない」という心理が働き、「みんな抜け出してお金稼いでいるよ」と言われただけで同調して失踪を決断してしまいます。

このような影響力に対抗するには、実際に失踪をして逮捕されたような事例を用いて、失踪の悲惨な現実を見せることで対抗できるのではないかと思います。

多くの技能実習生が失踪しているが、それは価値があるのではなく欺されているだけなんだということを繰り返し伝えることが重要です。

内部からの影響力で対抗する

返報性の影響力

「受けた恩は、返したくなる」というものです。コンビニでトイレを借りると何か買わないと申し訳なくてそのまま外に出られないと感じるアレです。

技能実習生が実習実施者や監理団体に「恩」を感じさせ、真面目に技能実習に取り組む行動に無意識に向かうように状況を整えてしまいます。

具体的には、実習実施者から出し惜しみせず技能実習生の働きに感謝をするような言葉や行動をとることや、困っていることに優しく手を差し伸べることによって、自然と技能実習生は「恩」を感じ、それを返す何かをしなくてはいけないという気持ちにさせたときに、「失踪などして迷惑をかけられない」という意識が働くことに期待します。

好意の影響力

男女の恋愛ではない「好意」です。「自分に似ている」「自分を褒めてくれる」「同じゴールを目指す仲間である」というようなことがあると人は好意を抱きます。好意は人の大きな影響力を与えます。好きな芸能人が薦める商品を買いたくなるアレです。

技能実習生に「好意」を抱かせるような行動や取組を行っていれば、自然と失踪の誘惑に対抗できる影響力になるということです。

コミットメントと一貫性

「自分が決めたことを口にしたり、書面に残したりすると、それを守ろうとする気持ちが強くなる」というものです。一回「そんなものいらない」と口に出してしまうと、「やっぱり頂戴」と言えなくなるアレです。

技能実習生にも「技能実習を最後まで頑張る」「外からの誘惑には負けません」など守ってもらいたいことややってはいけないことを口頭や書面で宣言させることによって、「表明した約束を守ろうとする」気持ちに働きかけて失踪の誘惑に対抗することができます。

権威の影響力

「肩書きや経験などの“権威”を持つ者に対して、人は信頼を置く」というものです。ラーメン王が教えるおいしい店と言われると食べに行きたくなるアレです。

技能実習生の自国の大使館など技能実習生が信頼を置くような”権威”を持つ人の言葉や資料を用いることにより失踪の誘惑に対抗するということです

まとめ

多くの失踪する技能実習生はだまされて行動しているのだと思います。

テレビやラジオで特殊詐欺に対する注意喚起を繰り返し行ってだまされることを防ごうとしていますが、失踪についても同様にだまされないための様々な取組を工夫して行っていく必要があると思います。

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