【技能実習】ニュースの解説:技能実習生、産後復帰11人、わずか2%

ニュース

ニュースの概要

○技能実習法施行後約3年間で、妊娠出産で実習を中断した外国人技能実習生637人のうち、実習を再開できたのは11人で、わずか約2%
○出産後も希望すれば実習を再開できることになっているが、多くは諦めて帰国したとみられる
○政府は少子高齢化に伴う労働力不足を補うため実習生の受け入れ拡大を進めているが、原則、家族の帯同を認めていない
○実習に戻るには子どもを母国に残し、離れて暮らさざるを得ないのが再開を断念する一因か。
○非人道的な制度の改善が急務だ。

このニュースに係る厚生労働省の発表はHPでは確認できませんでした。

解説

 厚生労働省の発表としては妊娠出産で技能実習を中止した人数は637人いたことと、復帰した人数が11人だったということでしょう。

 その情報にそれぞれの報道機関が追加してコメントしているのだと思いますが、その内容を正確に読み取らなければなりません。

○妊娠出産で実習を中断

 技能実習生が妊娠をした場合、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合に就業させてはならないことになっています。産後8週間は就業禁止となっています。

 どうあっても1月以上は技能実習を行うことができないため技能実習は中断しなければならず、実習実施者から技能実習が継続できないことを監理団体に通知し、監理団体は技能実習実施困難時届書を所轄の外国人技能実習機構に提出します。

○諦めて帰国した

 監理団体・実習実施者は、技能実習を最後まで行えることを説明した上で、技能実習の継続意思を確認することになっています。

 また、出産を日本でするのか帰国してするのかも確認するのですが、中断後の再開は、再度新規の技能実習計画の認定が必要であるため、ある程度子供が大きくなってから再開することも可能です。

 そのため一度帰国を選択することがほとんどであるのだと思います。

○政府は少子高齢化に伴う労働力不足を補うため実習生の受け入れ拡大を進めている

 技能実習は、労働力不足を補うための手段として行われてはならない旨の基本理念が技能実習法第3条に定められていますので、政府として法律を無視して労働者不足のために拡大を進めることはできません。

 このような表現はあり得ないのです。技能実習のニュースにはよくある表現ですが、政府が否定のコメントを出さないから思い込みで使われているのではないでしょうか。

○原則、家族の帯同を認めていない

 一度中断して帰国をしていますので、再開するには再度新規の技能実習計画の認定を受けて在留資格認定証明書の交付を受けなければなりません。

 中長期の在留資格を受けられるのは技能実習生のみとなっています。

 日本で出産して技能実習を再開した場合は、子供は「家族滞在」の在留資格は受けられるはずですので、子供も一緒に滞在することは可能です。

○実習に戻るには子どもを母国に残すことが再開を断念する一因か

 中断後の再開は、再度新規の技能実習計画の認定を受ければよく、再開までの年数制限は決められていないため、ある程度子供が大きくなってから再開することも可能です。

○非人道的な制度の改善が急務

 親子を引き裂くというイメージからのコメントでしょうが、日本で出産して再開することもでき、帰国したとしても、ある程度子育てが落ち着いてから技能実習は再開できるので、非人道的な制度というのは言い過ぎではないでしょうか。

 技能実習生が出稼ぎ目的で制度を利用したり、実習計画が大雑把だったり、債務超過の実習実施者が制度を利用したりと改善しなければならない点が多いことは事実です。

まとめ

 子供が生まれてから子育てが落ち着くまでは3年では足りません。実習を再開できる人数が少なくても仕方がないと思います。

 技能実習は学びの制度ですので、イメージとしては日本人でも在学中に子供が生まれた場合、すぐに復学することは難しく、子育てが落ち着いてから必要に応じて再入学するのと同じではないでしょうか。

コメント