【技能実習】Q2:宿泊施設の『容易に屋外の安全な場所に通ずる階段』とは、普通の屋内階段とは違うのですか?

宿泊施設

 回答

容易に屋外の安全な場所に通ずる階段』とは、避難するための階段を意味しており、普通の屋内階段と同じではありません。
 

基本事項

技能実習生が利用する2階以上の寝室に寄宿する宿泊施設の階段については、思いのほか厳しいルールが定められています。

 
<技能実習運用要領 第4章第2節第10(2) 宿泊施設の確保に関するもの>

 

2階以上の寝室に寄宿する建物には、容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を2箇所以上(収容人数15 人未満は1箇所)設ける措置を講じていること

 

 
 
この『容易に屋外の安全な場所に通ずる階段』は、既存の階段ではダメなのかという疑問だと思います。
 
 
要領のこの部分の出典は、事業場附属寄宿舎規程と建設業附属寄宿舎規程の次の条文です
<事業場附属寄宿舎規程第11条>

 ① 常時15人未満の労働者が2階以上の寝室に寄宿する建物には、各階に適当に配置され容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を1箇所以上設けなければならない。但し、適当な勾配を有する避難斜面等適当な避難設備がある場合においては、この限りでない。② 常時15人以上の労働者が前項の寝室に寄宿する場合においては、同項の階段は、2箇所以上設けなければならない。

 
<建設業附属寄宿舎規程第8条>  
① 使用者は、常時15人未満の者が2階以上の寝室に居住する建物にあつては1箇所以上、常時15人以上の者が2階以上の寝室に居住する建物にあつては2箇所以上の避難階段を設けなければならない。

② 前項の避難階段については、すべり台、避難はしご、避難用タラップその他の避難器具に代えることができる。ただし、常時15人以上の者が2階以上の寝室に居住する建物にあつては、1箇所は避難階段としなければならない。③ 前2項の避難階段又は避難器具は、各階に適当に配置され、かつ、容易に屋外の安全な場所に通ずるものでなければならない

 
要領には具体的な判断基準が書かれていませんので、この元になった2つの条文の解釈から考えてみます。
 
行政通達を調べたところ、平成6・9・28基発595号の建設業附属寄宿舎規程の改正通達に次のような記載がありました。
 
 
「避難階段」については、改正後の第8条第3項の要件を満たす限り、必ずしも屋外に設置されていることを要するものではなく、例えば、階段が寄宿舎の出入口に近接して設けられており、当該階段を降りて、何らの支障なく速やかに当該出入口から屋外の安全な場所に避難できるものである場合には、「避難階段」 を一箇所設置しているものと認められるものであること。なお、昭和57年10月5日付け基収第94号の別表については、「内階段」は上記のように出入口に近接していない場合を示すものであること。
 
 
つまり
 
 

 

こんなような階段なら、内階段でも『容易に屋外の安全な場所に通ずる階段です』と言い張れるということですね。玄関扉から離れていたり、扉があったりすると容易とは言えないので難しいでしょう。
 
 

 

<要領 留意事項>

 


 容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を2箇所以上(収容人数15人未満は1箇所)設ける措置を講じなければなりませんが、すべり台、避難はしご、避難用タラップ等の同様の代替措置により技能実習生の安全を確保できる措置を講じている場合には、技能実習生の報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書(参考様式第1-16 号)の特記事項に当該代替措置等を記載し、必要に応じて疎明資料を添付していただいた上で申請していただくことが必要です。

 

 

 
要するに、階段が要件に合致していなくても、避難器具を用意してあればいいよということです。
 
 
実際のところ、火災の時には階段は煙の通路になりますので、避難階段かどうかにこだわるよりも、2階に1箇所避難器具を用意すべきだと思います。
 
 

参考

令和元年の機構による実地検査では、1,063件も宿泊施設の不備で違反を指摘しており、技能実習の宿泊施設は重点的にチェックされている部分であることは間違いないです。
 
 
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」 で労働災害事例を検索すると、平成3年から平成27年までに寄宿舎の火災で61人の労働者が亡くなっています。
 
上記サイトに技能実習生の災害事例がありましたので、紹介いたします。
 
『家具製造工場の火災で寄宿舎の技能実習生5人が負傷』

 

この災害は、木製家具を製造する工場で深夜に火災が発生し、工場に隣接した事務所の2階に宿泊していた外国人技能実習生5人が避難しようと窓から飛び下りて被災したものである。この工場では、外国人技能実習生の受け入れに際し、事務所の2階を寄宿舎として使用していた。

 

災害発生当日の午前0時過ぎ、事務所2階で就寝していた技能実習生5人は、大きな爆発音を耳にし、隣接する工場で火災が発生したことに気がついた。

 

そこで、避難しようと1階に下りる階段に続くドアを開けたところ、すでに工場は火に包まれており、煙のため階段で下りることは不可能であったため、工場とは反対側の窓から地面に飛び下りたが、1人が骨折して入院したほか、ほかの4人も負傷した。

 

被災した技能実習生が使用していた寄宿舎への出入りは、事務所建屋の工場側に設けられた階段1個所のみであり、ほかに昇降設備は設けられていなかった。

 

この工場では、主に、家具の部品を塗装した後、研磨機で塗装表面の仕上げ加工を行っているが、研磨の際に生じた合成樹脂の屑が熱を帯びたまま堆積し、発火したことが火災の原因であった。工場では、研磨屑を定期的に清掃しておらず、火災発生前には相当量の研磨屑が堆積していた。

 

なお、この工場では、消火訓練や避難訓練を実施していなかった

 

 

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