回答
賃金支払いの5原則
1 通貨払
2 直接払
3 全額払
4 毎月1回以上払
5 一定期日払
のどれかが守られていない場合です。
主には
3 全額払
5 一定期日払
の問題が多いと思います。
毎年、厚生労働省のホームページで、「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」が発表されています。これは技能実習生に対する違反に限らず実習実施者に対して行われたものです。令和元年度において「賃金の支払」は11.2%の実習実施者で違反が指摘されています。
公表資料には解説がないので、ここで簡単に説明します。
全額払っていない
賃金支払いのルールについては別に解説しています
実習実施者に対する全額払っていない違反の指摘は
○根拠無く賃金から天引きした
○農業職種、漁業職種での割増賃金不足
主にこの2つなので、これを解説します。
賃金から天引き
基本的に賃金からの天引きは認められていません。
賃金を全額払った後に労働者から支払いを受けるようなものについて、お互いの手間を省くために、労使協定を結んで天引きすることが可能になります。
これを「賃金控除協定」とか労働基準法第24条の協定なので「24協定」といっています。
考え方は法改正の時に示されています。
労働基準法の一部を改正する法律等の施行について(昭27.9.20基発675号) 法第24条関係 (1) 第1項但書の改正は、購買代金、社宅、寮その他の福利厚生施設の費用、労務用物資の代金、組合費等、事理明白なものについてのみ、法第36条の時間外労働と同様の労使の協定によつて賃金から控除することを認める趣旨であること。 |
技能実習の場合は
○宿舎代
○水道、光熱費
○wifi代
などが天引きされていることが多いですが、この点について賃金控除協定がないと違反と指摘されます。
ただ、この労使協定は届出義務がなく、有効期間も1年の自動更新としていることが多いので、1度結べばずっと有効にできます。
それだけに、控除協定の存在すら忘れてしまうこともありがちです。
その違反が指摘されているということは、過去の監査で一度も確認しなかったということでもあり、監理団体としての監査体制の信用問題となってしまいます。
控除できるのは
「事理明白なもの」と限定されています。当然労働者が払うべきであるものをいいます。会社が払うべきものは対象外であることに注意です。
技能実習の場合は、例えばwifi代のように、ほとんどの人が希望するからといって、利用の希望を確認しないで控除すると、全額払の違反と指摘される場合もあります。
技能実習の場合は宿舎代、水道、光熱費も実費を限度とするとされていますので、実費を超えた金額を控除すると、それも違反と指摘される場合もあり得ると思います。
控除額の限度は
これは具体的に労働基準法には定めがないですが、民事執行法第152条で賃金の4分の3は差し押えが禁止されています。
それは賃金が生きていくために大事なものだからです。それから考えると控除額の限度は4分の1を限度と考えた方が無難です。
農業職種、漁業職種での割増賃金不足
これは、農業と漁業は労働時間の適用除外とされている業種ですので、割増賃金を定めた労働基準法第37条の適用がありません。
農業と漁業は、割増賃金支払を強制されるものではないけれど、技能実習受け入れのルールとして、労働基準法準拠で1日8時間1週40時間を超えた場合割増賃金を支払うという雇用契約を結んでいるので、払わなければ契約違反として賃金不払になるということです。
だから、「賃金の支払」の違反としてカウントされているはずなのです。
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