回答
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して必要な労働条件の明示をしなければならないことが労働基準法で決まっていて、それがなされていない場合に違反となります。(第15条)
毎年、厚生労働省のホームページで、「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況」が発表されています。これは技能実習生に対する違反に限らず実習実施者に対して行われたものです。令和元年度において「労働条件の明示」は7.7%の実習実施者で違反が指摘されています。
公表資料には解説がないので、ここで簡単に説明します。
なぜ必要か
労働関係は、労使が労働契約を締結することでスタートします。契約は口頭でもいいのですが、お互いの認識に違いがあると大きなトラブルとなります。
例えば、使用者が「月20万円を保証する」と説明したときに、使用者は「月給20万円」のつもりで言ったのに、労働者が「手取りで月20万円」と受け取るかもしれません。
このようなことを防止するために、労働条件の明示とその方法が定められています。
労働条件の明示方法
労働条件の項目ごとに明示の方法も定められていて、大事な項目は「書面の公布」の方法となっています。
最近、書面の代わりに労働者が希望した場合には
○FAX
○電子メール等(記録を出力して書面作成が可能なものに限る)
とすることもできるようになりました。
明示すべき項目
書面での明示事項 |
① 労働契約の期間 ② 就業場所(技能実習場所) ③ 職務内容(職種と作業内容)④ 給与の決定、計算・支払の方法、締切、支払の時期について⑤ 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇(年休を含む)⑥ 所定労働時間を超える労働の有無 |
定めをした場合に明示すべき事項 |
① 退職金の決定、計算・支払の方法、締切、支払の時期などについて ② 賞与や臨時に支払う賃金などについて ③ 労働者負担とする作業用品や食事代などについて④ 安全衛生について⑤ 職業訓練について ⑥ 災害補償や業務外の疾病の補助などについて ⑦ 表彰と制裁について ⑧ 休職について |
技能実習生の場合
技能実習生に対しては、技能実習計画認定申請時の添付書類であり、技能実習生の管理簿の項目でもある「雇用契約書及び雇用条件書(参考様式翻訳版第1-14号)」があり、これは2部作成し実習実施者と技能実習生それぞれが保有しているはずですので、雇用契約と労働条件の明示はかならずしていることになるはずです。
それなのになぜ違反を指摘されるかというと、
ということがあった場合です。
技能実習法が施行されて、技能実習計画は実習実施者が作成しなければならないことになりましたが、書類の作成は監理団体に任せきりで内容を確認もしていない実習実施者も多くいます。
実習実施者が
「労働条件の通知はしていますか?」
と質問されたときに、
「はい通知しています」
といって、技能実習計画認定申請の会社控えに保存されている「雇用契約書及び雇用条件書(参考様式第1-14号)」を示し、技能実習生も「受け取った」といえば違反とは指摘されません。
実習実施者が技能実習計画をしっかり把握することはもちろんのこととして、監理団体の担当者として、技能実習計画の内容だけではなく、添付した重要書類についても何度も説明しておかないと、実習実施者が労働関係法令違反と指摘され、監理団体としても監査の時きちんと確認していないと外国人技能実習機構から指摘されてしまうことにもなりかねません。
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