ニュースの概要
これは厚生労働省の発表が令和3年8月27日あり、それに基づき報道されたということのようです。
解説
さてこの記事を見て「70%も違反とは技能実習生が可哀想」と思ったと思います。
でもニュースでは「技能実習生の事業所」と書いているだけで、技能実習生に対して違反があったとは書いていません。
要するに実習実施者に立ち入り調査に入っただけですので、技能実習生に関係のない違反も含めてカウントしているということに注意しなければなりません。
70%は多いのか?
ニュースの元となった厚生労働省発表の資料を確認します。これと比較する対象として「労働基準監督年報」という資料がありましたが、令和2年のものがなかったため、平成31年・令和元年のデータで比較します。
上の表が平成31年・令和元年の実習実施者の違反率で、下の表が業種全体の違反率です。
全業種の違反率としては実習実施者のみの方がちょっとだけ高いだけです。
これを見ると労働基準監督署の立ち入り調査はそもそも違反率が高いことが判ります。
技能実習は労働関係法令を遵守している企業が行えるので、「機械・金属」「食料品製造」のように違反率が低くなっていなければなりません。
逆に高くなっている「繊維・衣服」、「建設」、「農業」がおかしいのです。
このあたりを厚生労働省も発表してもいいのではないでしょうか。
というか、厚生労働省は外国人技能実習の主務省庁でもありますので、この業種をこのまま技能実習の対象としているのではなく法令遵守していない実習実施者をなんとかすべきでしょう。
外国人技能実習機構も認定審査でしっかりチェックすべきです。真面目に取り組んでいる実習実施者が迷惑します。
主な違反状況は?
ぱっと見て実習実施者に賃金関係の違反が多いと思います。
労働時間の違反が多いということは仕事量に比べて人手が足りていない状態だということです。
賃金関係の違反が多いということは契約を守っていないということです。
外国人技能実習機構があんなに時間をかけて審査したにもかかわらず、技能実習のルールを守らない企業を排除できていないことを機構もしっかり受け止めなければならないでしょう。
まとめ
実習実施者の違反率が報道される度に技能実習を行っている事業場が悪徳であるかのような印象を受けてしまいますが、労働基準監督署の立ち入り調査の違反率をみると、日本の企業の違反率が高いことが判ります。
それでも実習実施者の主要業種で賃金関係の違反が多いことが判りますので、それぞれの立場でしっかりとどうすべきか考えていかなければならないのではないでしょうか。
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