はじめに
実習実施者は、技能実習生の生活の指導を担当する者として「生活指導員」を1名以上選任しなければならないことになっています。
でも、技能実習制度運用要領では、生活指導員が何をしなければならないかが具体的に書かれていません。
そこで、技能実習制度運用要領を補足して、どんな役割なのかを考えてみました。
生活指導員の選任
生活指導員は選任できる人が次のとおり決まっています。
① 実習実施者又はその常勤の役員若しくは職員である者
② 技能実習を行わせる事業所に所属する者
③ 欠格事由に該当する者(禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終えた日から5年を経過していない者など)ではない者
④ 過去5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しい不当な行為をした者ではないもの
⑤ 未成年者ではない者
つまり、不正の前歴が無い常勤の役員か職員であって技能実習を行わせる事業所(工場など)に所属する成人した者から選任します。
生活指導員の役割
技能実習制度運用要領では次のような記載があります
生活指導員は、技能実習生の我が国における生活上の留意点について指導するだけでなく、技能実習生の生活状況を把握するほか、技能実習生の相談に乗るなどして、問題の発生を未然に防止することが求められます。なお、生活指導員が全ての生活指導を自ら行わなければならないものではなく、補助者を付けて生活指導をすることも可能です。 生活指導員は、技能実習生を生活面から直接指導する必要があることから、技能実習を行わせる事業所(工場など)に所属して勤務する者を選任しなければなりません。 |
具体的には
○生活指導員の生活上の留意点について指導する
○技能実習生の生活状況を把握する
○技能実習生の相談に乗る
この3つの役割が求められています。
○生活指導員の生活上の留意点について指導する
生活指導上の留意点等のノウハウは監理団体に蓄積されているはずですので、その情報の提供を受けることが簡単です。
それが難しければ、出入国在留管理庁のホームページに「生活・就労ガイドブック」(http://www.moj.go.jp/isa/support/portal/guidebook_index.html)
が公開されていますので、それを参考に留意点を作成します。
以下、「生活・就労ガイドブック」の日常生活におけるルール・習慣からの抜粋です。
1 生活のルール
1-1 ごみ
(1)ごみ出しの基本ルール
ごみを出すとき,以下のことを守る必要があります。
・ ごみの種類ごとのごみを出す場所と日(曜日)を守ること
・ どこに,どの種類のごみを出すのかは,住んでいる市区町村のルールに従うこと
(2)不法投棄など(違法なごみ捨て)
どのような場所であっても定められた場所以外にみだりにごみを捨ててはいけません。
定められた場所以外にごみを捨てた場合,刑事罰を科せられることがあります。
住んでいる市区町村におけるルールを守って,ごみを捨てるようにしてください。
また,多くの市区町村で,空き缶やたばこの吸い殻などを道ばたなどに捨てる「ポイ捨て」を禁止する条例を定めています。犯罪になるときがありますので,ポイ捨てはしないでください。
1-2 騒音
日本人は,大きな音や声を出すことは,他人に対して迷惑だという意識があります。
・ 大きな話し声,パーティー,テレビや音楽の音などについては,近所の人に迷惑にならないように気を付けましょう。
・ 朝早い時間に洗濯をしたり掃除機を使ったり,シャワーを浴びるなど大きな音を出さないように気を付けましょう。
・ 特にアパートやマンションなどの集合住宅では,大きな音や声を出さないように気を付けましょう。
1-3 トイレ
日本の水洗トイレ
・ 使用する紙は,トイレにある紙を必ず使ってください。
・ 使用済の紙は必ずトイレで流してください。
→ 使用済の紙をトイレ内に設置してあるごみ箱に捨てる習慣のある国がありますが,トイレにある紙を使用すれば,日本の水洗トイレで紙がつまることはめったにありません。
・ デパートや駅のトイレには,ボタンがたくさんありますが,水を流すボタンは,流す(FLUSH)と書いてあることが多いです。
1-4 携帯電話の使用
・ 他の通行人にぶつかってけがを負わせることや,自分自身がけがをすることもあるため,携帯電話の操作を歩きながらしてはいけません。
・ 自動車や自転車を運転しながら携帯電話を操作することは法律で禁止されています。
1-5 電車やバスの中
電車やバスは公共の場となりますので,以下の点に注意してください。
・ 大きい声で話すことはマナー違反となります。
・ 列車内やバスの車内で,携帯電話で通話することは,日本ではマナー違反となります。
・ 大きい音で音楽を聞くことも迷惑になります。イヤフォンから音がもれないように注意してください。
・ 車内が混んでいるときに,リュックサックを背中に背負ったままでいると,他の人にぶつかって迷惑になります。
1-6 温泉・銭湯
・ 温泉・銭湯などの公衆浴場は,不特定多数の人が利用するため,以下のルールを守って利用してください。
・ 体を洗ってから,湯船につかってください。
・ 湯船の中にはタオルを入れてはいけません。
・ 湯船の中で石鹸やシャンプーを使って体や髪を洗ってはいけません。
・ いれずみ(タトゥー)がある人は入ることができない場合があります。
3 生活に必要なこと
3-1 地域生活
(1)コミュニティ団体(自治会・町内会)
日本では,地域に住む人たちが自主的に団体を結成し,様々な活動を通じ
て,住みやすく,安心して暮らせるまちを目指しています。活動に必要な費
用は会員が負担します。
主な活動内容
・ 地震や火事が起きたときに備える防災訓練
・ 登下校時の子どもの見守り活動
・ 高齢者・障害者への福祉活動
・ 市役所などからのお知らせの回覧
・ 会員間の親睦を深めるための祭や運動会などのイベントの開催など
詳しいことは,住んでいる市区町村に問い合わせてください。
(2)近所付合い
・ 近所の住人と日頃からあいさつを交わしたり,行事に参加したりする地域などでの付合いをしておくことにより,近所の住人同士でのトラブルが起きにくく,その地域で注意しておくことなどの情報交換もできます。
・ 災害などが起こった際に,お互いに助け合うこともできます。
3-2 防犯
盗難や痴漢などの被害にあわないように,次のことに気を付けましょう。 ・ 外出するときは,家の窓や玄関ドアに必ず鍵をかけましょう。
・ 自動車,オートバイ,自転車をとめておくときは,必ず鍵をかけましょう。
・ バッグや財布など大切なものを持ち歩くときは,目の届かないところに置いたままにしないようにしましょう。
・ 夜はなるべく暗い道や人通りの少ない場所を通らないようにしましょう。
・ 防犯のことで,わからないことや不安なことがあるときは,最寄りの警察署などに相談しましょう。
3-4 携帯電話
(1)携帯電話の契約
・ 携帯電話の契約時には本人であることの確認を受けることが必要です。
・ 本人であることの確認には,①氏名,②生年月日,③現住所が記載された公的書類(本人確認書類)を,携帯電話事業者に対し提示するか,または,郵送もしくはウェブサイトで写しを送付することが必要です。
・ 例えば,以下のような書類が,本人確認書類として使用可能です。
① 在留カード
② 運転免許証
③ マイナンバーカード
④ パスポート(現住所の記載があるものに限る)
・ あなたが未成年者である場合には,以下のもの全てが必要です。
① あなたの本人確認書類
② 親権者の同意書
・ 料金支払手続のため,以下のもののいずれかが必要です。
① クレジットカード
② 日本国内の銀行口座のキャッシュカード
③ 日本国内の銀行口座の預金通帳
・ 携帯電話会社によっては,ホームページや店舗などで外国語での対応を行っています。
・ 契約に必要な書類を事前に確認したり,携帯電話サービスについて質問したりすることができます。
(2)契約や利用の際に注意すること
・ 「携帯電話を代わりに契約してあげる」と言って近づき,あなたの本人確認書類を勝手に使って携帯電話を契約し,犯罪に利用する悪質なブローカーがいます。
・ 契約を他人に依頼する場合は,自分でも内容を確認してください。
・ 契約した携帯電話を,携帯電話会社の承諾を得ずに他人に譲り渡すことは法律違反として処罰されます。
3-5 銀行口座
(1)銀行口座を開設する
・ 銀行店舗で銀行口座開設の手続ができます。銀行によっては郵送,スマートフォンアプリ,パソコンでも手続できます。通常,キャッシュカードは後日自宅に郵送されます。
・ 銀行口座を開設するときは,次の書類などを持って銀行に行ってください。
① 本人確認書類(例:在留カード)
② 印鑑(サインでも可とする銀行もあります。)
③ 社員証や学生証(持っていないときは会社や学校の人に一緒に来てもらってください。)
・ 日本語でのコミュニケーションに不安がある場合は,あなたのことを継続的にサポートしてくれる人(あなたの所属する職場や学校の人)に通訳をお願いしてください。
(2)使わない銀行口座を解約する
・ 帰国などにより銀行口座を利用しなくなる場合は,銀行口座を解約してください。銀行店舗で解約の手続ができます。
※ 銀行口座(キャッシュカード・通帳)の売買,譲渡は犯罪です。絶対にしないでください。違反すると,1年以下の懲役又は 100 万円以下の罰金が科されます。
3-6 郵便局
・ 日本の郵便局と郵便ポストのマークは「〒」で,赤色を基調としています。
・ 郵便局では,以下のサービスを受けることができます。
① 国内外へ手紙・はがきや荷物を送付できます。
② 貯金,送金,公共料金などの振込ができます。
③ 生命保険への加入ができます。
4 公共交通
4-1 ICカード
(1)基本的な機能
交通系のICカードは,色々な会社の電車やバスの運賃の支払に使うことができます。ここでは,一般的な交通系ICカードの機能を説明します。
・ ICカードにお金を事前に入れる(チャージする)ことで,券売機で切符を購入する手間が省けます。
・ 駅の券売機や窓口,バスの営業所などで購入できます。 ・ 現金の支払より運賃が安くなることがあります。
(2)記名カード
・ 使用する人の名前が記載されたカードです。
・ 名前,電話番号,誕生日,男性・女性の登録が必要です。
・ カードを紛失しても,再発行することができます。
(3)無記名カード
・ 使用する人の名前は書かれていません。
・ カードをなくしても,再発行することはできません。
(4)預かり金(デポジット)
・ カードを購入するときに預かり金を支払うことが一般的です。
・ ICカードを返却するときに戻ってくるお金です。
4-2 鉄道
日本は鉄道が発達しており,通勤や通学をはじめ,身近な移動手段として利用されています。
(1)鉄道の利用
鉄道を利用する際の基本的な手順は以下のとおりです。
① 路線図で行き先を確かめる
② 駅で目的地までの切符を購入して,改札を通る。(交通系 ICカードが使用できる場合は,自動改札機にカードをかざすことで改札を通ることができます。)
③ 駅構内の案内掲示に従い,目的地に向かう列車が発着するホームの番線に向かう。
④ ホームでは,白線又は黄色いブロックの内側で列車を待つ。
⑤ 目的地では,購入した乗車券を使用して改札を通る。(交通系 ICカードを使用した場合は,自動改札機にカードをかざすことで,カード のチャージ額から運賃が支払われます。)
(2)切符の種類
① 普通乗車券:列車に乗るときに必要な切符。
② 回数券:同一区間の切符の 11 枚つづりを 10 枚分の値段で買うことができます(有効期間は3か月)。
③ 定期券:通勤または通学で一定の区間を月単位で繰り返し乗る場合に使います。普通乗車券で同じ区間を乗車する場合より割安に設定されています。1か月,3か月,6か月等の期間の設定があります。
(3)その他の切符
・ 特急列車に乗る場合や,車両の特別な設備を利用する場合には,乗車券のほかに以下の切符(料金券)を購入する必要があります。
① 特急券:新幹線や特急列車に乗るときに必要な切符。
② 指定席券:指定席を利用するときに必要な切符。特急券とセットになったものもあります。
③ グリーン券:通常の車両よりグレードの高い車両を利用するときに必要な切符。
4-3 バス
(1)長距離を移動するもの(長距離バス)
・ 基本的には乗車の前に切符を買うなど支払をすませておく必要があります。
(2)住んでいる地域の決まったルートを移動するもの(路線バス)
① どこまで乗っても同じ運賃の場合
・ バスに乗るときに運賃箱にお金を入れる。
・ 交通系 ICカードなどで支払う場合は,運賃箱にカードをかざす。
② 距離によって運賃が変わる場合
・ バスに乗るときに,番号が書かれた整理券を受け取り,バスを降りるときに,整理券に書かれた番号を運転手の上のボードで確かめ,番号の下に表示されている運賃を支払う。
・ 交通系 ICカードなどで支払う場合は,バスに乗るときと降りるときの2回,カードをかざす。
長くなりましたので次回に続きます。
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