今回は、監査や訪問指導に行くときの移動時間が労働時間になるのかという疑問にお答えしたいと思います。
移動時間が労働時間になる場合
一般的に、移動時間が労働時間になるのは、以下のような場合です。
- 監理団体の事務所に出勤した後に、監理団体から実習実施者や実習実施者から実習実施者などに移動する場合
- 移動中に監理団体の業務を行っていると認められない場合
これらの場合は、移動時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められるので、監理団体の指揮命令下にある時間と考えられます。したがって、移動時間は休憩時間を除いて労働時間となります。
移動時間が労働時間にならない場合
一方、移動時間が労働時間にならないのは、以下のような場合です。
- 自宅から実習実施者に直行する場合
- 実習実施者から自宅に直帰する場合
- 移動中に監理団体の業務を行っていると認められる場合
これらの場合は、移動時間の自由利用が労働者に保障されていると認められるので、監理団体の指揮命令下にない時間と考えられます。したがって、移動時間は通勤時間と同様に考えることになります。
ただし、自宅から直行直帰する場合でも、監理団体から移動方法や時間を指定されている場合は、移動時間が労働時間になる可能性があります。例えば、監理団体の車で行くことを命じられている場合や、監査開始時間に合わせて出発することを命じられている場合などです。このような場合は、監理団体の指揮命令下にあると主張する余地があります。
だからといって必要以上に早くから出発してゆっくりと実習実施者に向かった場合の時間すべてが労働時間だとするにも無理があります。
トラブルを防ぐためには
監査や訪問指導に行くときの移動時間が労働時間になるかどうかは、監理団体の指揮命令下にあるかどうかによって判断されますが、これは必ずしも明確な基準があるわけではありません。場合によっては、監理団体と担当者の間で意見が食い違うこともあります。
そこで、トラブルを防ぐためには、以下のような対策が必要です。
- 監理団体と担当者は、監査や訪問指導に行く場所や時間、移動方法や時間などについて、事前に明確なルールを決めておくこと
- 監理団体は、担当者のスケジュールを管理し、過重業務や長時間労働にならないように注意すること
- 担当者は、監査や訪問指導の内容や結果、移動時間や休憩時間などを正確に記録し、報告すること
- 監理団体と担当者は、監査や訪問指導に関する問題や疑問があれば、適切に相談し、解決すること
担当者を朝早くから夜遅くまで長時間拘束した場合、それが労働関係法令違反や技能実習法違反となる行為であれば、監査は監理責任者の指揮の下で行うものなので監理責任者が指揮監理責任を問われ、結果的に監理団体として改善命令等の処分を受けるリスクとなってしまいます。
まとめ
監理団体から監査等の移動時間も含めて監理団体に戻るまでの時間は休憩時間を除いて原則労働時間であると考えます。
自宅から直行直帰の時に業務のスタートまでの間と業務終了から自宅までの間を通勤時間とみなせる場合もあるかもしれません。
監理責任者は監査に係る所要時間や移動時間から過重業務となっていないかどうかを指揮管理する責任があることに留意してください。
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