有識者会議最終報告の感想 1

新制度関係

 今回からしばらくは、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の最終報告の内容を読んでの感想です。

感想

  • 三つの視点のうち「外国人のキャリアアップ」について
     人手不足に対応する制度として運用していくことに決めたのであれば、それまでの建前であった人材育成という目的を残す必要があったのかという疑問があります。
     きっとこれは、「単純労働者は受け入れない」という在留資格の原則を維持するために必要だということで残したのでしょう。
     実際は「牡蠣打ち」、「大葉の結束」、「野菜選果」などの単純作業をさせていることとの矛盾が残るままとなってしまいます。
  • 四つの方向性のうち「技能・知識を段階的に向上させその結果を客観的に確認できる仕組み」について
     人材育成という目的を残すので、技能実習の1号、2号のときに必要だった「技能検定」の合格が必要になる制度になるということです。
     1~2週間程度特訓すれば受かる程度の試験を2年目に移行するために必須にするという、現行の技能実習制度の問題点は見直さなくても良いのでしょうか。
  • 四つの方向性のうち「本人意向の転籍」について
     北国は大ピンチですね。技能実習制度は自分で会社を選ぶことができず、転籍もできなかったので、我慢して実習期間中はその会社で勤務しなければなりませんでした。温暖な地域から来る技能実習生は多いので、冬の宿泊施設では暖房全開で過ごします。光熱費も結構かかることになります。
     それが転籍できるようになるのであれば、より温暖な地域を希望することになるのではないでしょうか。
     また、日本の最低賃金は都道府県ごとに金額が違うため、賃金額が高い都道府県への転籍の希望もあるでしょう。
     このあたりを新制度ではどのようにクリアするのでしょうか。
  • 四つの方向性のうち「監理団体等の要件厳格化」について
     技能実習法もこの方向性であったと思います。現実にはほとんどの団体は許可されており、新聞に載るような問題を起こした団体だけが取消処分となる程度の運用であり、監理団体の数も技能実習法が施行される前よりも多くなってしまっています。
     新しい制度を作って要件を厳格化といっても、結局審査をする組織のマンパワーが足りずにゆるゆる審査になってしまわないか心配です。
     新しい制度は地方公共団体か傘下の団体が責任を持って運営するぐらいのことを最終報告してくれれば良かったと思います。
  • 留意事項「現行制度の利用者等への配慮」について
     真面目に技能実習制度や特定技能制度を利用していた者にはその通りだと思います。しかし、排除すべき利用者もいます。そのあたりもしっかりと最終報告に盛り込んでくれればいいと思います。
  • 留意事項「地方や中小零細企業への配慮」について
     現行の制度では、直近期末において債務超過がある企業であっても、中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面があれば、技能実習の受け入れが可能です。
     つまり、倒産寸前の企業であっても、公的資格を有する人が「大丈夫」と言えば受け入れ可能だということです。その結果倒産して技能実習生が困難な状況になったとしても、「大丈夫」といった人の責任は技能実習制度運用要領には何も記載がありません。
     配慮もいいですが、問題点もしっかり最終報告に盛り込んで欲しかったと思います。
     また、新制度では「本人意向の転籍」と「地方や中小零細企業への配慮」とはどのようにバランスをとるのでしょうか。

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